夏休みを利用して京都旅行に行く人も多くいるのではないでしょうか。京都と言えば歴史はもちろんですが食や観光など、様々なことを楽しめるため日本人だけでなく外国人観光客にも注目されています。
魅力的な観光名所でもある京都の中でも特に注目されているのが、祇園祭です。
ここでは、祇園祭とはそもそもどのようなものなのか、その歴史などに触れていきます。実際に祇園祭に行く際にそれが持つ歴史や意味などを知っておくことで、より一層魅了されることでしょう。
祇園とは何なのか
祇園祭に実際に行ったことがない人でも、この言葉を聞いたことがある人も多くいるかもしれません。それだけ有名な祭りなわけですが、そもそも祇園とは一体何なのでしょうか。
祇園というのは祇園精舎から来ているとされ、祇園精舎の守り神が牛頭天王だと言われています。この牛頭天王は災厄や疫病などを封じ込める神様として崇められており、牛頭天王を祀る神社で祇園祭が行われているのです。
ちなみに祇園精舎とは天竺にある五精舎の一つとしても知られており、平家物語にも登場する非常に有名なものでもあるのですが、平安時代の人々は祇園精舎が何なのかはっきり理解していた人はほとんどいなかったとも言われています。この祇園精舎ですが、今では梵鐘も取り付けられており祇園精舎の鐘の声をしっかり聴くことができます。
祇園祭の歴史について
続いて祇園祭の歴史について見ていきましょう。祇園祭がどこで行われるのかというと八坂神社です。八坂さんと地元の人には呼ばれているように地元民に非常に親しまれている神社である一方で、その歴史は非常に深いところにあります。
上記の通り、牛頭天王を祀るために祇園祭が行われるのですがこの始まりは9世紀のことだとされています。その当時、都であった京都やその周辺で疫病が流行り人々は非常に困っていました。その原因が牛頭天王の祟りだと考えた当時の人々は、これを祀るために66本の矛を立て神輿を神泉苑に送り疫病対策をしたのです。
現在では疫病対策として何かを祀るというのは考えにくいと感じるかもしれませんが、科学的な技術がなかった当時の人はこれを最先端の方法だと考えました。このことから、祇園祭は祇園御霊会と呼ばれることもあります。
祟りを鎮めたケースとしてはこの他にも、菅原道真の怨霊を鎮めたものもあります。室町時代になると経済的な力を持つようになった町衆も多くみられるようになり、鉾だけでなく山や輿を建てるなどしてより発展していくことになります。
室町幕府が滅亡する原因にもなった応仁の乱が10年近く続いてために、祇園祭も中断せざるを得なくなってしまいましたが1500年になるとそれまでで最も華やかかつ絢爛な祇園祭になります。これは応仁の乱で荒廃した京都の復興を担った職人や商人などが、まるで特需だと言わんばかりに儲けるようになりその資産を活用して祇園祭をより豪華なものへと発展させていったのが理由です。
当然のことながら、この当時は現在のように情報が一瞬で日本中さらには世界中を駆け巡ることは不可能でしたので祇園祭と言えども京都やその周辺の地域でしか親しまれていませんでした。
ところが江戸時代に入り18世紀頃、『都名所図会』という書物が刊行されここに祇園祭の山鉾巡行がどのようなものなのか、文字だけでなく挿絵付きで紹介されるようになります。祇園祭の様子はもちろんのこと、それを見物している人も細かく描かれているために京都以外の地域の人も祇園祭の情報を入手できるようになったのです。
ちなみに、『都名所図会』では祇園祭全体の様子を知ることができますがその後に刊行された『祇園御霊会細記』には34基の山鉾が一基ずつ紹介されるなど、より詳細な情報も明らかになります。
神輿について
祇園祭の中心となる八坂神社ですが、ここにはどういう神様が祀られているのでしょうか。ここではスサノオノミコトとクシナダヒメノミコト、そしてヤハシラノミコガミの三座です。
こうした神様は祇園祭が行われている期間、神輿に乗られて八坂神社からお出かけになります。それぞれの神輿は形や装飾が異なっており、スサノオノミコトの神輿は屋根が六角形で鳳凰と青稲の装飾が施されており、クシナダヒメノの神輿は屋根が四角形で葱花が装飾されています。ヤハシラノミコガミは西御座の神輿に乗られ、八角形の屋根で鳳凰が装飾されています。
いずれの神輿も男衆がかつぐことになるため、大迫力の祭りを観ることができるのです。
神輿はどういうコースを行くのかですが、これもしっかりと決められていて前祭りの巡行が終了した日の夕方に八坂神社の南楼門を出発して、それぞれが決められたコースを進み四条御旅所に到着してからは7日間留まることになります。これは祇園祭とは違って神幸祭と言われています。
7日間留まった後は後祭が終了した日の夕方に氏子地域を練り歩いて八坂神社に戻ります、これは還幸祭と言います。
このように、一口に祇園祭と言ってもその中にはいくつかの祭りを含んでいるのも面白いポイントでしょう。
祇園祭の見どころは
上述のような情報を理解してから見どころをチェックした方が、自分なりにここは見ておきたいと思えるかもしれません。ここでは、祇園祭の見どころを紹介していきます。
最初に紹介するのは、何と言っても山鉾巡行でしょう。これを見るために京都を訪れる人もいると言っても過言ではありません。山鉾はこれまで何度か触れていますが、もう少し詳しく見ていきますと豪華絢爛な装飾や美術品があしらわれていることから「動く美術館」と呼ぶ人も少なくありません。
その迫力に圧倒されてから祇園祭の虜になり、毎年のように足を運ぶ観光客も多くいるほどです。山鉾巡行の先頭に立つのが長刀鉾であり、金箔の鯱鉾と水引、そして鳳凰は一見の価値があります。最後尾を担うのは大船鉾であり、その昔、戦を終えて戻る凱旋の場面をイメージして制作されたものです。
実は山鉾は先頭と最後尾だけに注目すれば良いのではなく、町内ごとにお囃子や装飾品、形やご利益まで違っていますので、自分が好きなものを見つけるのも祇園祭の楽しみと言えるでしょう。
次に紹介するのは、辻回しです。辻回しとは山鉾の方向を変えることで巡行の中でも最大の見どころと言えるかもしれません。
向きを変えるだけなら何が見どころなのか、と思う人もいるかもしれませんがこの辻回しは人の力だけで行うものでしかも大きな山鉾の場合、10トン以上の重さのものもありますのですさまじい迫力を間近で見ることができます。人がただ向きを変えるだけでなく、変えやすいように青竹を道路に敷いたり、水をかけて滑りやすくするなど様々な工夫がなれている点にも注目すると良いでしょう。
向きが変わるのもそうですが、その掛け声、特に鉾に乗って合図を出す音頭取りの掛け声も忘れずに見ておく必要があります。実際、辻回しの圧倒的な迫力と掛け声に魅了されて辻回しのファンになったという人も数多くいます。
祇園祭では宵山も見逃すことはできません。宵山はいわゆる前夜祭にあたるもので7月15日と16日はお店も多く出店されることから、気軽に足を運ぶことができます。宵山は前夜祭と後夜祭に分けられていて、後夜祭ではお店は出ませんが、辻回しの迫力とは違った幻想的な雰囲気に包まれますのでこちらを目的に訪れる人もいると言われています。
次に紹介するのは、屏風祭りです。これは文字通り屏風を展示、公開する祭りなのですがこれを公開するのが屏風などの調度品を所有している山鉾町の老舗や旧家だという点がポイントです。誰もが公開できるお祭りではないため、かなり貴重な祭りではないでしょうか。
かつてはかなりにぎわったという記録も存在していますが、今ではその数も少なくなりしかしその分だけ貴重性が増している後世に語り継いでいきたい祭りの一つとも言えるでしょう。この辺りの人々の暮らしを知るためには屏風祭りに行くのが良いとも言えます。
続いて紹介するのは御朱印です。見どころとは少々異なるかもしれませんが、最近では御朱印集めが人気になっているためせっかく祇園祭に来たのであれば御朱印をもらっておきましょう。
実は祇園祭期間中でも御朱印をもらうことができ、その期間は前祭と後祭の宵山期間中に限り、それぞれの山鉾町で押印してもらえます。これを知らないとそもそももらえないのではないか、いつでも押してもらえるだろうと勘違いしてしまいますので注意が必要です。
また、御朱印と一口に言ってもそれぞれの山鉾町でご利益やデザインが異なっている点も忘れてはなりません。ただ押してもらって良かった、というのではあまりにも寂しいのでそれぞれの御朱印のご利益やデザインがどうなっているのかなどまで比べると、祇園祭により親しみを感じるのではないでしょうか。
最後に紹介するのは、提灯落としです。祭りの期間中は提灯の灯りが灯されてとても幻想的かつ豪華な光景が広がることになります。
しかし盛り上がりを見せて祇園祭もいつかは終わってしまいますので、その提灯の灯りを落とさなければならないのです。特に函谷鉾の提灯落としは圧巻で、一気に落とされますので寂しさと同時に祭りの雰囲気が最高潮に達します。
祇園祭を知ってから訪れるとより親しめる
ここでは、祇園祭の歴史やその始まりなどに触れてきました。特に見どころは多くの人が気になっているポイントではないでしょうか。
ただ有名だから、テレビで見たから、というのではなくその歴史や由来などを事前に勉強しておくことで、「そうそう」とより一層親しみが持てることでしょう。
祭りの期間中は混雑しますので、時間帯などにも注意を払いながら訪れることをおすすめします。開催期間もチェックして、祇園祭に行けて良かったと思えることが大切です。
祇園祭以外にも京都には観光要素が豊富です。詳しくは「国内旅行で人気の観光地・京都のおすすめエリアをご紹介」をご覧ください。
画像素材:京都フリー写真素材